評価:
Michael Morpurgo MacMillan UK ¥ 664 (2003-02) コメント:近くの農場に、口蹄疫に感染した豚が発見された。恐ろしい感染力で広がる被害。対策は疑わしいものからその近くの健康なものまで焼いてしまうしかない。ついにBecky の牧場にも…。
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新聞には「口蹄疫」、テレビでは「口てい疫」と書かれています。
ルビを振ってでも漢字表記しなくてはいけません。
蹄(ひづめ)のある動物にだけ降りかかる、悲しすぎる、ひどすぎる伝染病なのですから。
私と同じく、クリスマスが誕生日のBeckyは、プレゼントに特別な日記帳をもらいます。
でも、この日記は4月30日で最後を迎えます。口蹄疫の流行により、彼女の暮らしはすっかりかわってしまったのです。
作者は2001年の The Mouth and Foot Outbreak
の記録を残すためにこの本を書きました。日記はフィクションですが、起こったことは事実です。
宮崎県で最初に「口蹄疫の疑い」が新聞報道された日から、私は新聞の記事を毎日注意深く読んできました。多読を初めて間もない時期に読んだ本ですが、この病気の悲惨さは強く印象に残っていたのです。
日記形式で、ハリーポッターなどと比べると最初は次のページをめくりたくなる展開ではありませんでした。でも、病気が広まり、処分される家畜たちを焼く黒い煙が村を覆い、だんだん自分の牧場に近づいてくるにつれ、恐怖がこちらにもひしひり伝わります。
いつかは食肉になる動物とはいえ、飼い主にとっては子どものように手塩にかけた生き物たちです。処分されてしまった牛、豚、羊たちのスケッチには、一匹一匹に名前が付いていました。
ゴードンには蹄はありません。
Beckyの牧場の生き物にはありました。
可愛がっていた子ヒツジが目に涙を浮かべた処理班の人に連れて行かれ、銃声が聞こえた時、Becky は心にナイフが刺さったように感じたのでした。
この口蹄疫の大流行で処分された家畜の数は million で表されています。
農家や、処理に当たる人たちのの悲しみ、悔しさは、経済的損失と補填の問題だけでは表せないものです。
この事件のさなかに海外にいた、という農相はこの本を読んでいなかったのだと思います。
前足を触られるのが極端に嫌いで、長く伸びた爪をなかなか切らせてくれないゴードン。
蹄じゃなくてよかったね。
宮崎で処分されてしまった生き物に安らかな眠りを。
しまう生き物たちに、苦しみの少ないことを。
悲しい思いをされている皆様に、少ない被害で早く終息することを心からお祈りいたします。