かま猫さんがやってきた!

評価:
宮沢 賢治
偕成社

¥ 1,680

(1994-10)
コメント:黒井健さんのやさしいタッチの挿絵が、理不尽なイジメをうけるかま猫の悲しさをじわっと伝えてくれます。
絵本は、絵をみなければ絵本じゃない。実感しました。

 先日紹介した、宮沢賢治作「猫の事務所」。

私は朗読を聴いたのですが、「絵をみてみたいものです。」と書いた
翌日に、黒井健さん挿絵のこの本が我が家にやってきました 

ブログを読んだ教室の生徒さんのお母様が、授業のときに届けてくださいました。


授業が始まるタイミングで届けられた絵本。
思わずページをめくり、そのまま1~2分、授業を始めるのを忘れて
ページをめくってしまいました。
本の大好きな生徒さんたちですから、私の気持ちはよ~く分かってくださったようです。

かま猫さんを見ると、目の奥が熱くなりそうでした。

生徒さんは、小さいときにお母さんに読み聞かせてもらった本
だと教えてくれました。

難しかったそうです。

確かに。

ま、私は就寝前にiPodで聴くので、半分眠っていたらしく
「かま猫」の由来さえ半分聞き逃していました。
じっくり読むと、今私たちが使っているより、ずっと難しい日本語です。

何回か読んでみました。
カバーの裏の解説に書かれていた、
「差別の不条理さと愚かさ、差別されるものの悲しみ」
が、じわっとにじみ出てきます。
かま猫さんは寒がりで、かまどで寝るからすす汚れている。
さらに、エリート集団に事務長の推薦で入ったから嫉妬されてもいるんです。
お母さんも、少し気持ちが沈む本ですね、とおっしゃってました。

本当に。

賢治がこの本を書いたときも今も、世の中は変わりましたが、
人間の本性はなかなか変わらないんですもの。

今は鼻をたらした子供や、身なりがひどく汚い人もいなくなりましたが、
なんらかのイジメのねたを見つけるものですよね。

何らかの理由で自分があまり幸せでない者が、
その怒り、悲しみのエネルギーで弱そうな物を攻撃する。
その攻撃をはやし立てたり、見てみぬふりをするものが
イジメをつくる。

ところで、最後に獅子が事務所に入ってきたとき、
慌てふためくねこたちと対照的に
かま猫さんは、「泣くのをやめて、すっと立つ」んですよね。
賢治はどうしてこう書いたのでしょうか。
黒井さんは、このかま猫の絵の心に、何を書き込まれたのでしょうか。

やましいことをしていないから、堂々としておれたのかな?

事務所が閉鎖されてから、猫さんたちはどんな風に生きたのでしょうね。

かま猫さんに尋ねてみたいです。

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